奈良時代の遺跡から桐の下駄が出土したほどで、古い時代からキリ材の有用性は知られていたのですね。今は昔の話になってしまいましたが、戦前、地方によっては女子の誕生にあわせて庭にキリの木を植樹する風習があり、それで嫁入り道具の桐箪笥を作って持たせたりしたそうで。製材可能な樹齢は、松が40年、杉に至っては80年、これに対して桐では10〜15年。これなら十分間に合いますよねぇ。
ところで、キリという植物の分類上の揺れははげしく、同一出版社の本でも、初版本の発行年次にかかわらず、「ノウゼンカズラ科」とするものと、「ゴマノハグサ科」とするものが混在していたりで、素人泣かせですよ。
因に、google で「キリ ノウゼンカズラ科」と「キリ ゴマノハグサ科」でand 検索してみたところ、後者が前者のほぼ3倍ヒットしました。栽培されているものでも、原産地を異にするいくつかの系統はあるのに、いまだに分類学的把握が不十分だそうですよ。でも、キリの花の淡紫色は素敵の一語につきますねぇ。
熊野路に知る人もちぬ桐の花 去来
嫁してより父似といはる桐の花 福嶋延子